HOBO日鑑イタイ新聞

職人が二本の人差し指で一文字一文字、じっくり丁寧に打ち込みました

我が日本の技術力は世界一ィィィ

アベノミクスによる円安・株高がニュースになっています。今まで円高に苦しんできた輸出企業も、為替が円安方向に向かうことで、業績回復の期待が高まるということですね。

最近は日本でも、サムソンに押される日本家電メーカーの苦境が伝えられますが、ヨーロッパに住んでいると、もっと以前から、家電量販店でのサムソンの存在感の大きさを感じざるを得ませんでした。

海外市場でサムソンが台頭してきたとき、日本人の反応は、「どうせ他のメーカーのパクリ商品をウォン安に乗じて、安売りしているだけ」「技術力では日本のほうが上」といったものでした。日本の家電メーカーもこのように考えていたからこそ、日本から韓国への技術流出を放置していたのだと思います。完全に油断していたといえるでしょう。

その点、世界一になっても気を緩めることなく、ヒュンダイ自動車を決して甘く見ることの無かったトヨタは流石ですし、それが今の好業績にも表れています。

サムソンについては、かつてのソニーやアップルのように、革新的な製品を生み出したことも無いので、個人的には好感を抱くことはありませんが、それにしても、いつの間にかサムソンの後塵を拝することになった日本メーカーについては、情けないの一言です。

もちろん、サムソンが韓国国家を挙げての優遇措置を受けていることや、為替が日本企業にとって不利に動いたこともあるのですが、前述した通り、技術に対する過信や驕り、甘さがあったことは否定できないと思います。

私がなぜ、日本の家電メーカーをこのように情けなく思うかというと、これと同じような構図が、初生雛鑑別師の世界にもあるからです。

雛鑑別は日本発祥の技術で、手先の器用な日本人は海外でも引っ張りだこ、というような紹介のされ方をよく見かけますが、実は現在のヨーロッパでは、日本人鑑別師より韓国人鑑別師のほうが多いのです。(正確な統計が無いので私の知る限り、ですが)

韓国人鑑別師の歴史も案外古く、元鑑別師の韓国人で、70歳近い人もいますから、おそらく50年はあるはずです。(韓国自体の歴史に匹敵するわけですから、一応長い歴史といっていいでしょう)

韓国人鑑別師が登場した当初、日本人と韓国人では技術に相当の差がありました。鑑別技術は個人の技能ですから、当然、中には上手い韓国人もいたはずですが、全体としてみればその差は歴然としていました。

そこで韓国人たちが孵化場に入り込むために採った方法は、サムソンが市場に食い込むために採った方法と同じダンピング、つまり安売りです。日本人の働いている孵化場に、安い鑑別料金で攻勢をかけたのです。

それで職場を韓国人に奪われることもありましたし、職場を守るために、料金の値下げに応じねばならないケースもありました。こうして鑑別師が儲かる時代は、徐々に終焉を迎えました。ここまでならば、単に、市場原理が働いて、高過ぎる鑑別料金が是正された、というだけのことで、「おいしい話はいつまでも続かない、しょうがないね」で終わった話です。

ところが、鑑別料金の値下がり傾向がある程度落ち着いてきても、韓国人の勢力拡大と、日本人の職場の縮小は続きました。韓国人の値下げ競争のせいで、日本人の職場を奪われた、と言っていられなくなったのです。技術で優る日本人が、鑑別料金を下げて、同条件で競争しても、あの下手くそな韓国人に勝てないなんて……なぜだ……

実は、そもそも日本人鑑別師のほうが鑑別が上手い、ということ自体が、もはや幻想です。最近は、韓国人鑑別師の技術水準も上がってきました。スポーツ選手も、試合に出場する機会が多いほうが、成長を望めます。最初はダンピングで掴んだ仕事場でも、そこで経験を積むことで技術も伸びるのです。

サムソンを甘く見ていた日本の家電メーカー。韓国人鑑別師を甘く見ていた日本人鑑別師。どちらも市場を奪われ、そして技術面の優位性も失われてきています。アベノミクスは日本の家電メーカーを救うでしょうが、日本人鑑別師を救うヒーローは、当面、現れそうにはありません。